伊勢型紙を使ったイラストレーション 月さらい

2018年5月29日(火)から6月3日(日)の期間、セントラルアートギャラリーにおいて名古屋イラストレーターズクラブ絵本原画展が開催されました。この作品は名古屋市在住の若手作詞家とうげさんが書いた詩とともに展示を行いました。

|月さらい|

その昔、ある男と女が居た。地位も財産も無いが幸せだった。
無情にも死の病が男を襲うまでは
或る満月の夜、悲しみに暮れる女の夢に天女が現れ、こう云った
「男を助けたくば月を捕って溶かし呑ませるのです」
「…如何すれば」「其方の命と引換えに」

頷いた刹那、眩い光に包まれ目を開くと女は天上に居た
天女と同じ柔らかな羽衣が肩を抱く
灯りはそっと夜空から盗まれた

女はお告げ通り月を溶かし男の枕元に置いた
気付くと女の体は透き通って
羽衣は急かすように天へと腕を引く
男の頬に残る涙の跡を撫でると
欠けた月を抱え、女は天上へ昇っていった

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